日本維新の会、林佑美です。
教育無償化を実現する会との統一会派を代表して、令和六年度一般会計予算及び特別会計予算に対し、反対の立場から討論いたします。
まずもって申し上げます。そもそも、今の自民党に、国家の進路を方向づける予算を策定する正当性があるのでしょうか。
派閥と所属国会議員による政治資金パーティーの不正な売上操作や多額の裏金づくりは、国民の政治に対する信頼を完全に失墜させました。それなのに、昨秋の問題噴出以降、人ごとのごとき対応を続け、この期に及んで刷新なる言葉だけの改革ポーズを取ることに憂き身をやつし、政治と金の問題の抜本的解決は一体どこへやら。見えてくるのは、どこまでも国民を愚弄した不誠実な態度ばかりです。
総裁たる岸田総理始め自民党の皆さんは、自民党の常識は世間の非常識であることをちゃんと認識されているのでしょうか。
党内の聞き取り、アンケートは、裏金の真実解明への羅針盤にはならず、いかにお手盛りであるかが白日の下にさらされました。裏金議員も収支報告書の訂正は行いこそすれ、一部の議員は臆面もなく使途や金額、支出日を不明としてお茶を濁すずさんさは、ただただ唖然とさせられるばかりです。
政治刷新本部の中間取りまとめは踏み込み不足であり、端的に零点をつけざるを得ません。また、公表から一月が経過しても続報が聞かれません。最終の取りまとめがいつ公表されるかは、いまだに不透明です。これが我が国の政権与党の姿であるとしたら、余りにも寂しいと言わざるを得ません。
我が党は、維新版政治改革大綱を策定しました。政治資金の在り方を見直すことを機に、選挙制度や国会運営まで幅広い改革を一気通貫で実行し、腐敗の根底にある構造問題自体を解決することで、我が国に政権交代のある二大政党制を確立し、緊張感のある政治を取り戻す必要があると考えます。
平成元年に自民党が公表した政治改革大綱では、国民本位、政策本位の政党政治の実現を掲げ、我が党にとって痛みを伴うとしつつも、小選挙区制導入を断行しました。今の自民党が私利私欲にとらわれ、真っ当な大局観を持つ人材が失われたのであれば、政権を返上すべきではないでしょうか。
日本の経済と財政をめぐる環境は危機的状況にあります。社会保障関係費は、本年度から八千五百億円余り増加して四十兆円に迫り、増加の一途をたどっています。
厚生労働省は、先月、令和五年の出生数が七十五万八千六百三十一人だったと明らかにしました。出生数は、昨年に引き続き八十万人を割り、過去最低を更新しています。政府は異次元の少子化対策を喧伝するものの、少子化の底は抜け、現役世代の数は減少を続けています。
世界では、ロシアのウクライナ侵略、イスラエルとハマスの戦闘など、深刻な戦争、武力衝突が続いており、日本を取り巻く安全保障環境は困難の度を増しています。
一方で、次世代の産業の芽はなかなか育ちません。我が国の研究開発投資は停滞し、米国から大きく水を空けられる一方、韓国にも猛追を受けています。
数多くの問題を抱えた日本を下支えするため、令和六年度予算の歳出規模は、特定目的予備費の削減等で本年度から僅か二兆円弱の減額にとどまり、経費の膨張トレンドは逆転できていません。
さらには、財政規律の劣化も深刻です。新型コロナウイルス感染症が拡大した令和二年度から、政府は機動的な対策を盾に予備費の積み増しを図り、コロナ禍以降の予備費は合計で三十兆円に上っています。これは、財政民主主義の例外たる予備費として異常ではないでしょうか。過去、一般予備費は多くて五千億円程度の規模であるところ、令和六年度の予算では、能登半島地震の復旧復興を大義名分とし、一兆円もの一般予備費を計上しています。
加えて、基金にも八千億円強を積み増すこととしています。コロナ禍を経て、基金残高は十六兆円を超え、肥大化した基金の整理縮小は急務であるところ、更に残金を積み増す理由はないと考えます。これらは全ての国民の負担となり、真綿で首を絞めるように生活を苦しめています。
社会を維持するために必要な支出は増える一方で、その負担が次世代への投資を圧迫する悪循環に陥っているのが今の日本であり、抜本的に資源配分を改革しなければ、今後は縮小均衡に陥ることは免れないでしょう。しかし、改革国会とすべき今国会の実態は、裏金国会、脱税国会と成り下がりました。これら政治と金の問題の根源にあるのは、自民党と一部の企業、団体との癒着関係です。
平成六年に誕生した政党交付金は、企業、団体からの献金が政策決定をゆがめる弊害を取り除くことが目的でした。趣旨を踏まえると、企業・団体献金は当然禁止し、また、パーティー券の企業、団体向けの販売も同様に禁止するのが筋です。それにもかかわらず、自民党は、政治資金規正法の抜け穴を活用し、企業・団体献金を受け取り続けています。結果的に一部の企業、団体が政策決定をゆがめてきたことを指摘しなければなりません。
自民党は、医療関係の団体から毎年数億円に上る多額の献金を受け取り、医療費削減には本腰を入れて取り組まず、政府が提唱する子供、子育て加速化プランの財源となる約一兆円の公費削減すら、ほとんど手つかずです。加えて、診療報酬もプラス改定となりました。この負担は、社会保険料を通じて現役世代に転嫁されるのみならず、子ども・子育て支援金の詐欺的とも言えるロジックで、子育ての負担をも押しつける方針です。
少子化対策の内容も総花的であり、高等教育を無償化するなど、思い切っためり張りもありません。我が党は、教育の多様性の確保及び選択肢の拡大に積極的に取り組んでおり、地方自治体での先行事例を参考に、日本全体で高等学校の無償化を提言しています。一方で、政府にこの件を問いただしても、自治体任せにするばかりです。これが果たして異次元の少子化対策でしょうか。
同様の事象は幅広い業界にわたっています。企業・団体献金や、迂回のためのパーティー券販売、票の取りまとめ等で自民党と既存業界が癒着することで、非効率な業界構造が温存され、競争力を失い、一層の業界保護を求める悪循環が様々な業界で引き起こされています。自動車業界に匹敵する一大産業とされる医療業界で効率化が進まないことや、業界の利益に忖度し、新規参入ができない日本版ライドシェアが誕生したこと。これらは、本来、公正な競争環境の下で効率化やサービス向上を競うべきところ、権力と結託し、競争環境自体をゆがめている点で共通しています。日本経済が停滞する原因の一端がここにあります。
冷戦の終結後、グローバル化の進展や人工知能等の破壊的な新技術の出現など、世界の姿が目まぐるしく変化し、現在は、先行きが見えないVUCAの時代と言われております。その一方で、自民党は、旧態依然としたしがらみ政治にとらわれ続けています。私利私欲のため、癒着システムの維持に血道を上げる政治は、これからの世代のために、ここで終止符を打たなければなりません。
今は、高度経済成長期と異なり、政治が経済成長の果実を直接国民に分配することはできません。今の政治の役割は、果実が育つ土壌を用意することです。それは、例えば、健全な競争環境を確立し、強靱な民間経済を確立することであり、一部の企業、団体におもねり、ぬるま湯の保護主義に陥らない公正な政治を取り戻すことです。
日本維新の会は、しがらみの政治から脱却するため、企業・団体献金の禁止を訴え、既に内規で実現しています。また、我が党の政治改革大綱では、企業、団体へのパーティー券販売も禁止することを訴えています。我々は、日本経済の悪循環を逆転し、一部の企業、団体のみではなく、努力する人が公平に報われる社会をつくることを申し述べ、反対討論といたします。
御清聴ありがとうございました。