会計検査院は、令和六年九月三日、内閣から令和五年度歳入歳出決算、令和五年度国有財産増減及び現在額総計算書、令和五年度国有財産無償貸付状況総計算書の送付を受け、これらの検査を行って、令和五年度決算検査報告及び令和五年度国有財産検査報告とともに、令和六年十一月六日、内閣に回付いたしました。
まず、令和五年度決算検査報告につきまして、その概要を御説明いたします。
令和五年度の一般会計の決算は、歳入百四十兆二千十六億余円、歳出百二十七兆五千七百八十八億余円でありまして、会計検査院はこれらの決算を確認いたしました。
令和五年度の特別会計につきまして、会計検査院は十三特別会計それぞれの歳入、歳出の決算を確認いたしました。
また、国税収納金整理資金は、収納済額百兆七千二百三十二億余円、支払命令済額二十四兆三千三百六十七億余円、歳入組入額七十四兆七千四十五億余円でありまして、会計検査院はこれらの受払額を検査完了いたしました。
令和五年度の政府関係機関につきまして、会計検査院は四政府関係機関のそれぞれの収入、支出の決算額を検査完了いたしました。
令和五年度の歳入、歳出などに関し、会計検査院は、国、政府機関、国の出資団体などの検査対象機関について、在庁検査及び実地検査を実施いたしました。そして、検査の進行に伴い、関係者に対して六百余事項の質問を発しております。
検査の結果、検査報告に掲記した不当事項などについて、その概要を御説明いたします。
まず、法令、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項は、合計二百九十四件、七十七億三千六百八十六万余円であります。
このうち、収入に関するものは、四件、十三億七千三百三十二万余円であります。
その内訳は、租税の徴収が適正でなかったもの、保険料などの徴収が適正でなかったものなどとなっております。
また、支出に関するものは、二百九十件、六十三億六千三百五十四万余円であります。
その内訳は、委託費などの支払が過大となっていたもの、医療費の支払が過大となっていたもの、補助事業の実施及び経理が不当なものなどとなっております。
次に、令和五年十一月から令和六年十月までの間におきまして、会計検査院法第三十四条又は第三十六条の規定により意見を表示し又は処置を要求いたしましたものは二十二件であります。
その内訳は、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金などの特例貸付に係るフォローアップ支援の体制整備などの状況に関するもの、独立行政法人農林漁業信用基金が行う農業信用基金協会に対する貸付金の規模に関するもの、福島再生加速化交付金により設置造成などが行われた基金の規模に関するものなどとなっております。
次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項は二十二件であります。
その内訳は、出国時に免税対象物品を所持していない者に対して行われる消費税の賦課決定などに関するもの、建設工事に係る契約変更に関するもの、強制執行等補助業務における目的外動産などの運搬及び処分に係る費用の積算に関するものなどとなっております。
次に、不当事項に係る是正措置などの検査の結果につきましては、昭和二十一年度から令和四年度までの検査報告に掲記した不当事項のうち、是正措置が未済となっているものは三十省庁などにおける三百九件、百二億三千四百三十万余円、このうち金銭を返還させる是正措置を必要とするものは二十九省などにおける三百二件、九十六億二千八百八十三万余円となっております。
次に、令和五年十一月から令和六年十月までの間におきまして、会計検査院法第三十条の二の規定により国会及び内閣に対して報告いたしましたものは、マイナンバー制度における地方公共団体による情報照会の実施状況に関するものの一件となっております。
次に、本院の検査業務のうち、検査報告に掲記する必要があると認めた特定の検査対象に関する事項は六件であります。
その内訳は、一般会計の補正予算の執行状況などに関するもの、子育て世帯及び低所得世帯向け給付金事業の実施状況に関するもの、電気利用効率化促進対策事業及び電気・ガス価格激変緩和対策事業の実施状況に関するもの、防衛予算の執行状況などに関するものなどとなっております。
次に、特別会計に関する法律に基づき、令和五年十一月に内閣から送付を受けた令和四年度特別会計財務書類について検査した旨を検査報告に掲記しております。
引き続き、令和五年度国有財産検査報告につきまして、その概要を御説明いたします。
令和五年度末の国有財産現在額は百三十七兆六千九百四十三億余円、無償貸付財産の総額は一兆二千八百四億余円になっております。
検査の結果、国有財産の管理及び処分に関しまして、令和五年度決算検査報告に掲記いたしましたものは五件であります。
その内訳は、意見を表示し又は処置を要求した事項といたしまして、戸田公園内に所在する普通財産の管理などに関するもの、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項といたしまして、給水管又は汚水排水管の埋設を伴う工事の設計及び施工に関するものなどとなっております。
以上をもって概要の説明を終わります。
会計検査院といたしましては、機会あるごとに関係各省庁などに対して適正な会計経理の執行について努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し述べましたような事例がありますので、関係各省庁などにおいても更に特段の努力を払うよう望んでいる次第であります。