紙智子
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2024年以降(第216~213回国会)の発言数: 333
※ 会議の議長だった場合の発言を除く
紙智子君による発言要約一覧
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2024-04-26
第213回国会(常会) 参議院 本会議 第15号 発言No.27会議全体を見る- 紙智子君は、食料・農業・農村基本法の改正について総理に質問し、自給率の低迷や農業者の減少を憂慮している。
- 改正案には農業生産や自給率向上の明記がないことを指摘し、反省や見直しを求める。
- 食料安全保障についても新自由主義の農政を転換する必要があると訴え、改正案の審議を強調した。
私は、日本共産党を代表して、食料・農業・農村基本法の一部改正について総理に質問いたします。
一九九九年の基本法制定から二十五年、四半世紀ぶりの改定です。国民は、食料自給率の低迷、農業者や農地の急激な減少、農村の存亡の危機を強く憂えています。
本改正案は、今後の日本の農政の方向を決める重要な法案であり、参議院において徹底審議を行い、地方と中央の公聴会を持つなど、関係者からも十分に意見を聞き取り、その意見を反映させたものとなるように強く求めます。
現行の基本法の原案には、農業生産という言葉はあっても増大という言葉がなく、食料自給率はあっても向上という言葉はありませんでした。
当時、世界の貿易がWTO体制に移行し、輸入自由化が進む中で、食料の国内生産を重視しようという運動と議論が展開されました。その結果、食料自給率の向上と農業生産の増大をセットで明記する修正がされたのです。この国会の意思を総理はどのように認識していますか。
食料自給率の向上を位置付けたにもかかわらず、二〇〇〇年に四〇%あった自給率は三八%に低下しました。食料自給率目標は一度も達成されたことがありません。総理、なぜ目標が達成できなかったのですか。その反省はあるのですか。
一九八〇年の四月に参議院は、食糧自給力強化に関する決議を採択しました。当時、ソ連によるアフガニスタン侵略によってアメリカが穀物などの対ソ禁輸措置をとったことから、世界で食糧需給が不安定化しました。決議案の提案者は、食糧が外交手段の一つとして用いられるなど、食糧輸入国である我が国にとって食糧問題は極めて重大な、重要な課題となっているとして、政府に国民生活の安全保障体制として食糧自給力の強化を求めたのです。
ところが、アメリカから農産物を買うように求められ、日本は、日米の首脳によって設置された日米諮問委員会が一九八四年に、日本の食糧安全保障政策は、構造調整を妨げ、真の食糧安全保障をも阻害しているとの報告書を出したんです。
その後、アメリカの圧力を受けて、牛肉・オレンジの自由化、WTO協定による自由化を進め、二〇一〇年代に入ると、安倍政権は、日豪EPAを締結し、環太平洋経済連携協定、TPPやメガFTAなど自由化を進めました。
国内では、二〇二二年十一月の財政制度審議会が自給率の向上には疑問と投げかけ、国際分業、国際貿易のメリットを無視しているという建議を出しました。アメリカの圧力と、そして政府の経済財政政策こそが食料自給率を低下させたのではありませんか。
ところが、本改正案には、自らの農政を反省するどころか、現行法にある、食料自給率の目標はその向上を図る指針という文言を、食料自給率の向上の改善が図られるという抽象的な表現に変えました。幾つかの目標の一つに格下げしたのではありませんか。
一方で、食料安全保障を確保するために、あえて輸入の頭に安定的という言葉を付け加えて、安定的な輸入に依存する条文に変えています。輸入を重視し、国内生産の増大を軽視するのではありませんか。
安倍晋三元総理は二〇一三年の日本再興戦略で、十年間で全農地面積の八割を担い手に集積すると掲げました。担い手が減っても大規模な農家に農地を集めれば耕作面積は維持できるという政策です。
ところが、二〇二〇年の農林業センサスでは、二〇一五年から農地面積は十七万ヘクタールも減少し、五年単位で見ると最も多く減少しました。主として農業で生計を立てる基幹的農業従事者も五十万人減少、担い手が減っても規模拡大すれば農地は維持される、食料の供給は保たれるというこの政策は破綻したのではありませんか。
農政審議会農業基本法検証部会で農業法人協会の会長は、若い人がなぜ定着しないかといえば、農業で食えないからだと発言しました。
今から三十年前、一九九〇年当時、約二万二千円を超えていた米価は、二〇二一年には全国平均で約一万二千円まで下がりました。米作って飯食えないという叫びが出て当然です。
全国平均の最低賃金は時給一千四円、一般労働者の平均賃金は二千百六十三円です。ところが、稲作農家の時間当たりの農業所得は、一戸当たり二〇二一年から二年連続して十円です。専業農家、主業経営体でも六百九十九円です。酪農は赤字です。総理、稲作農家で十円、酪農は赤字、これで生活できると思いますか。
一方、生産者には米は過剰だと、作るなと言いながら、ミニマムアクセス米、輸入米は毎年減らさずに七十七万トンも輸入しています。ミニマムアクセス米の赤字は累積で六千億円を上回り、税金で穴埋めしています。この赤字をどう解消するのですか。税金は生産者の所得を増やすために使い、アメリカなどのアグリビジネスのために使うべきではありません。答弁を求めます。
生産者の再生産を保障することは待ったなしの課題です。
二〇二一年の各国の農業関係予算に占める直接支払などは、イギリスで六八・三%、スイス七六・八%、フランス四八・四%、ドイツ三三・九%であるのに対して、日本は二八・〇%と余りにも低い水準です。
日本生活協同組合連合会が出した基本法見直しに関する意見書では、財政支出に基づく生産者への直接支払を求めています。今必要なのは、生産者の再生産を保障する直接支払に踏み出すことではありませんか。
担い手について聞きます。
農水省は、基幹的農業従事者が今後二十年で約四分の一の三十万人になると推定しています。JA全中も二〇五〇年に三十六万人に減少するとしています。
政府の担い手政策は、効率的かつ安定的な経営体である専業農家は支援するが、兼業農家など農業以外で生計を立てている生産者は専業農家の補助者という位置付けです。新規就農者は十年前の六万五千人が今や四万五千人に減っています。政府の担い手政策は、生産者の高齢化は強調しても、新規就農者を増やす点でも経営継承を進める点でも無策そのものではありませんか。
最後に、本改正案が食料安全保障について、国民一人一人がこれを入手できる状態であるとの定義を設けたことについてお聞きします。
FAO、国連食糧農業機関は、食料安全保障を十分で安全かつ栄養ある食料を物理的、社会的及び経済的にも入手可能であるときに達成されると定義しています。
農村の人口が減少し、飲食店が撤退し、買物難民が問題になり、コロナ禍、非正規で働く一人親家庭や学生が食料難に陥り、格差社会が言わば食料を手に入れることさえも困難にしました。一人一人の食料安全保障を確保するには、非正規雇用の増大といったこの格差社会を変えることが必要ではありませんか。
今必要なのは、生産者に自己責任を迫る新自由主義の農政の転換です。私たち日本共産党は、綱領で農業を国の基幹的生産部門に位置付けています。食料自給率の向上を国政の柱に据えることを強く求め、質問といたします。
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕