自由民主党の船田元であります。
自民党を代表しまして、今後の憲法審査会の議論の進め方等について意見を述べたいと思います。
その前に、先ほど橘衆議院法制局長から、これまでの憲法をめぐる様々な議論と経過をお話をいただきまして、私も何回か登場いたしまして、大変身の引き締まる思いであります。また同時に、幾つものハードルがあり、それを一つ一つ乗り越えてきた、このことにつきまして、感無量の部分もありますが、同時に、新たに、身を引き締めてこの問題に対処しなければいけない、そういう新たな気持ちも湧き上がってまいりました。
まず、国会での憲法論議においてよく取り上げられております、先ほどもお話のありました中山方式について、私の私見を申し上げます。
中山方式は、憲法調査会長、憲法調査特別委員長を歴任された中山太郎先生が提示をされた理念、そしてこれに基づく運営を表すものであります。すなわち、憲法に関する議論に政局を絡めず、少数会派の声も尊重しつつ、与野党の別なくお互いに譲り合って合意形成を目指すものであると理解をしております。
ただ、こうした理念にもかかわらず、例えば平成十九年の国民投票法の制定時における混乱を始めとして、憲法に関する議論がこれまで何度も政局に巻き込まれてきたことは、大いに反省をしなければなりません。
この点について枝野会長は、先日の会長就任の御挨拶におきまして、この中山方式の本質に立ち返らなければいけない、こう発言されており、私もこれには賛同したいと思います。今後も政局から離れた静かな環境の下で憲法に関する議論が着実に行われることを期待し、私も会長代理として枝野会長とともに環境整備に努めていきたいと思っております。
自民党は、党内の憲法論議として、平成十七年、そして平成二十四年、二回にわたりまして憲法改正草案をまとめてまいりました。
その上で、現在、自民党が優先的に取り組むべき憲法改正のテーマとして掲げておりますのは、自衛隊の明記、緊急事態対応、地方公共団体や参議院合区解消、教育充実、この四項目でありまして、この四項目につきましては、平成三十年に、条文イメージたたき台素案として公表したところであります。
ただ、この条文イメージは、完成された条文ではなく、あくまでもたたき台素案でありまして、憲法審査会における議論や各党、有識者の意見を踏まえ、幅広い合意を得て憲法改正原案の提出を目指すものと考えています。
この四項目のうち、特に緊急事態対応につきましては、憲法審査会において議論が大きく進展をしております。
具体的には、令和四年常会以降、議論が継続的に行われ、同年十二月に一度目、それから昨年六月に二度目の論点整理が行われました。さらに、さきの常会終盤におきましては、当時の中谷筆頭幹事が、五会派の共通認識の整理として、公明、維新、国民、有志の先生方のアドバイスを踏まえて作成した資料を配付し、選挙困難事態における国会機能維持条項に盛り込むことが考えられる事項の骨格について発言をされました。
さらに、その後、中谷筆頭幹事から、これをより詳細にした資料が公表されております。この資料では、その内容が条文に近い形で提示されているとともに、今後議論すべき課題についても整理されておりまして、これまでの議論の到達点はほぼこの資料に集約されていると考えます。今後の審査会においては、まずこれを発射台として、このテーマについて優先的に議論を進めていくべきである、このように考えています。
なお、先日、韓国で発出されました戒厳令、非常戒厳、これを引き合いに、緊急事態条項には濫用のおそれがあり、憲法に緊急事態条項を設けるべきではないと言われることもしばしばございますが、韓国の戒厳令と我々が行っている議論とは全く別物と考えています。
我々が議論している、いわゆる議員任期の延長を中心とした緊急事態条項は、いかなる緊急時であっても国会機能を維持し、国民の生命、身体、財産を守るための法律の制定や予算の議決ができるようにするための仕組みをつくっていこうというものであります。韓国の戒厳令のように政治活動を禁止したり報道や集会を規制したりするといったものとは全く性質が異なります。
さらに、国民投票法の議論も必要であると思います。令和三年改正の際に、投票環境の整備と投票の公平公正の確保について検討する旨規定されましたが、その検討期限が既に経過をしてしまいました。
まず、投票環境の整備に関しましては、衆議院の解散により廃案となってしまいましたが、公選法並びの国民投票法改正を速やかに行う必要があると思います。
また、投票の公平公正の確保につきましては、テレビCM、ネットを用いた広告や意見表明の在り方について様々な意見が出されております。
私個人としては、テレビCMの禁止強化、運動費用の上限規制、ネットを用いた広告や意見広告の直接規制というよりも、国民投票運動はできるだけ自由にとの国民投票法制定当時の趣旨を踏まえまして、事業者等の自主規制や間接的な方法による規制を中心に検討すべきではないかと思います。その間接的な方法としては、例えば、民放各社からCM考査の状況を広報協議会に定期的に報告をしてもらうなどの方法も考えられます。
また、フェイクニュースへの対応も含め、委員の皆様と議論を深めていきたいと思っております。国民投票の公平公正を確保する上で、国民投票広報協議会の役割は極めて重要であると思います。その役割や諸規程の整備についても議論を進めていきたいと思っております。
衆議院憲法審査会では、ほぼ毎週の定例日開催が定着をし、丁寧な議論が積み重ねられてきていると思います。先ほど申し上げました選挙困難事態における国会機能維持条項のように、議論が煮詰まってきているテーマもございます。今後は、議論を拡散させることなく、テーマを絞って、精力的に議論を集約していかなければいけないと考えます。皆様の活発な、かつ建設的な議論を期待いたしまして、発言といたします。