立憲民主・社民の横沢高徳です。
ただいま議題となりました食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案について、会派を代表し、生活の現場第一で質問いたします。
冒頭、自民党において不祥事が噴出していることについて、総理に伺わざるを得ません。
旧統一教会との癒着、派閥の裏金問題は、いまだ全容が明らかになったとは言えません。ほかにも、総理自らの脱法的総理就任パーティー、自民党青年局の破廉恥な懇親会、不適切な男女関係も国民の政治への信頼を失わせ続けています。
昨日も、宮澤前防衛副大臣が突然辞職されました。辞職願を提出した理由を問われた際、総理は、一身上の都合と繰り返し、その理由をお答えになっていません。
スキャンダルが出る度に総理は勇ましく信頼回復に向けて先頭に立って取り組むとおっしゃっているのですが、それでも不祥事が噴出し続けているのは、自民党の体質のみならず、総理のリーダーとしての判断にも問題があるからではないですか。
疑惑を持たれた議員にきちんと事情を尋ねているのでしょうか。国民に向けて説明をするよう促しているのでしょうか。明確な理由を示した厳格な処分をしていると胸を張って言えるのでしょうか。
総理は、自民党から不祥事が噴出している原因はどこにあり、どのような手法で改善されるとお考えか、答弁を求めます。
法案について伺います。
立憲民主党は、全国の農業現場を訪問し、生の声をお聞きし、一緒に政策を練り上げていく取組である農林水産キャラバンを全国で展開してきました。
また、基本法見直しに際し、農業関係団体や学者、研究者から御意見を伺い、党内で協議を重ね、昨年六月には中間取りまとめを取りまとめ、農林水産大臣に提出いたしました。
法案の審議においても、基本法改正により、より良いものとするため、現場の声を反映した修正案を作成し、与党と協議をしてまいりました。
しかし、与党からは、規定済み、対応不可、検討すらしないという返事でした。全国の農業、農村現場の意見を全く受け入れようとしない、総理の言う国民の声を聞く力のかけらもない姿勢では、国民の理解を得られる法改正などできるわけがありません。
熟議の参議院では、国民の皆様の思いを形にできるよう、充実した審議と真摯な対応を求めて質問に入ります。
地方では、人口減少に歯止めが掛かりません。特に中山間地域では高齢化が進み、子供の数はどんどん減っていく。学校は閉校し、熊や鹿、イノシシなどの被害はどんどん増えていく。先祖代々受け継がれてきた水田、畑は耕作放棄地となり、地域の伝統文化や伝統芸能の継承、地域コミュニティーの維持すら難しくなっている。
我が国のこの現実が、先日アメリカ議会でスタンディングオベーションを受けた総理の目にはどのように映っているのか、まずはお聞きしたいのであります。
改正案提出の背景と現行法の評価について伺います。
背景の一つとして、食料自給率の低下が挙げられます。米の消費の減退、畜産物、油脂の消費の増加という食生活の変化によるものです。次に、農業者の高齢化やリタイアが進み、担い手の育成、確保が不十分であること。さらに、農地が減少し、耕作放棄地は増加、農地を有効に利用する体制も十分でないこと。そして、農業生産の場であり、生活の場でもある農村の多くが高齢化の進行と人口減少により、地域社会の維持が困難な集落も相当数見られると説明されています。
今申し上げたこれらの内容は、一九九九年の現行基本法審議の際、政府がその背景として説明したものです。四半世紀前の課題が何一つ解決されていないまま現在まで続いていると、議場の皆様や国民の皆様は御理解いただけると思います。
そこで質問です。
総理は、今国会の施政方針で、農政を抜本的に見直すと発言されました。総理の言う農政の抜本的見直しとは、これまで国が進めてきた農政とどこがどのように違うのか、そして、多くの不安と危機感を持っている生産現場の皆様や、地域コミュニティー維持が難しくなっている農村部の生活は、総理の言う農政の抜本的見直しによって今よりどのように良くなっていくイメージを持っておられるのか、国民の皆様に分かりやすく具体的にお答えください。
今回、理念法を全面的に見直すというのであれば、この二十五年間の現行法の下の制度や政策の検証、現行法の理念が現在において妥当か否かを判断する必要があったはずです。しかし、基本法検証部会では、情勢の変化とその対応について整理することに力点が置かれ、これまでの制度、政策の在り方の検証、評価を十分行わないまま改正案が提出されています。これでは、食料安全保障という新たな理念を加えたところで、その実現につながるとは限らず、この四半世紀に解決できなかった課題への答えにもなりません。
そこで、改めて、改正案提出の背景と、現行法の下の制度と政策が現場にどのような影響を及ぼしてきたのか、改めて検証、評価を行う前向きな意向があるのか、併せて総理に伺います。
食料安全保障について伺います。
食料安全保障とは、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態と定義しております。改正案における食料安全保障の定義は、FAO、国連食糧農業機関の四つの定義を踏まえたものとされています。FAOが言う安全や十分な量といった平易で分かりやすい言葉にする方が国民の理解も深まり、理念の実現に近づくことができると考えますが、農林水産大臣の見解を伺います。
また、食料の安定的な供給において、国内における食料の安定的な確保を最も重視すべきと考えます。しかし、こうした考えを基本理念において明確にしようとする修正案は、なぜか衆議院で受け入れられませんでした。
改正案第二条第二項の食料安全保障に関する条文に国内における食料の安定供給の確保の重要性を明記するとどのような支障が生じるのか、農林水産大臣の具体的な説明を求めます。
日本の野菜の種子の生産は約九〇%が海外で作られており、種子自給率は一〇%程度です。
昨年三月二十三日の予算委員会にて、我が党の田名部委員が総理に食料安全保障の基本である種を守ることを質問した際、来年度中に食料・農業・農村基本法の改正案を国会に提出することを視野に、御指摘の点も念頭に置きながら、日本の農業の在り方、ありようについて考えていきたいと答弁されました。
にもかかわらず、改正案には、食料安全保障の基本であり、国民全体の財産である種子の確保の重要性の視点がありません。改めて、総理、種子の重要性の明記について総理のお考えを伺います。
食料自給率目標について伺います。
我が国の食料自給率目標は三八%、先進国では最下位、食料自給率の目標はここ二十年、一度も達成されておりません。スポーツの世界で生きてきた私としては、二十年間一度も目標を達成してこなかったことは、作戦や取組自体に問題があったとしか言いようがありません。
総理、法改正の前に、まずはどうして食料自給率の目標はここ二十年達成されないままだったのか、お答えください。総理が得意の様々な要因と曖昧にするのでは、残念ながら結果にはつながりません。はっきり明確に原因を検証した上で政策を練り直し、確実に結果につなげるべきと考えますが、総理の答弁を求めます。
改正案では、法案成立後に定める基本計画において、食料自給率の向上その他の食料安全保障の確保に関する項目の目標を定めるとしています。しかし、この規定ぶりでは、食料自給率の目標がその他幾つかある目標の一つに埋没してしまうのではないかと危惧をしております。
食料安全保障というのであれば、平時からの国内の食料生産の増大を基本とし、食料自給率を向上させるという方向性をはっきり打ち出すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
食料の価格形成と直接支払について伺います。
四半世紀前の課題が何一つ解決されていない以上、農政の転換が必要です。
政府は、新たに食料システムという言葉を用いて生産から消費までをトータルで見る視点を入れ、食料の持続的な供給に要する費用が考慮されるべきとした点は一歩前進かもしれません。しかし、現状を見る限り、生産コストの高騰の影響は生産者に重くのしかかり、再生産可能な価格とはなっておりません。
食料の価格形成においては、生産コストが十分考慮され、適正であることが重要です。食料の持続的な供給のみならず、再生産可能な価格形成の確保が考慮されるべきと考えますが、農林水産大臣の見解を伺います。
農業経営を持続可能なものとし、食料安全保障を確保する観点から、農家への直接支払に踏み込むべきと考えます。
総理は、過去の戸別所得補償制度を引き合いに出し、農地の集積、集約化等が進まず生産性向上が阻害されているおそれや、需給バランスや取引価格への影響等についての懸念を口にしますが、これらは直接支払に対する本質的な批判とは言えません。これまでの政策に対する反省もなく、変革へのプランもなく、単に農家への不利益を押し付けているだけのように見えます。
今申し上げたことを踏まえ、直接支払の是非について総理の考えを伺います。
農業の持続可能性という視点では、水田活用交付金の見直しにより、五年に一度の水張りルールなど現場の実情にそぐわないルールの徹底の影響による生産現場の混乱、離農につながるとの懸念の声が根強くあります。水田活用交付金見直しの見直しが必要と考えますが、総理の答弁を求めます。
次に、農村の総合的な振興について伺います。
国民の皆様の命の源、食料を守ることは、国を守ること、地域コミュニティーを守ることです。都市部の皆さんが食べる食料を守り、国や国土を守っているのが地方の生産者の皆さんです。
我が国の農業経営体のうち、家族経営体の割合は九六%です。この二十年で家族農業の方が約六割減、十軒中六軒が離農していることになります。
農業従事者の数はここ二十年で約半分に減っています。しかも、現在の生産者の八割は六十代、七十代の方です。六十代、七十代の方です。現場の皆さんの中には、いつまで田んぼや畑を続けていけるか分からないと不安を口にされることが大半です。
これから二十年後には担い手の数が三十万人になるとの推計です。もはや限界集落どころか、消滅する集落が出てきます。
総理、農村振興といいながら、ここ二十年でなぜここまで農業従事者が減少し、農村の衰退が進んでしまったのか、総理の見解を伺います。
改正案を見ると、関係人口、ジビエ、農泊など施策が一貫性なく並べられ、農村の総合的な振興に向けた体系化は見当たりません。農村は食料の安定的な供給を行う基盤、また、多面的機能が発揮される場であること、こうした農村振興の意義をきちんと基本理念に書き込むべきと考えます。そして、基本理念と施策とを結び付け、農村の総合的な振興を図るべきと考えます。
農村振興施策はどのような体系化が図られ、今後展開していく意向か、総理の見解を伺います。
岩手県の農村に生まれ育った者として、農は国の基である、この思いを強く訴え、私の質問とさせていただきます。
御清聴いただき、ありがとうございました。
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕