立憲民主・社民・無所属の吉川沙織です。
私は、今期国会の会期に関する件について、本日から十月九日までの会期とすることに反対の立場から討論を行います。
今ほど議長から御発言がございましたとおり、つい先ほど行われました議院運営委員会におきまして、議院運営委員会を構成する野党各会派理事全てからこの会期に反対の旨の意見表明を行い、採決においても反対の立場でその態度を取っています。
今期国会は、岸田内閣総理大臣が、自由民主党総裁の任期満了を迎えるに当たり、総裁選挙への不出馬を表明し、自民党の総裁が交代するとの状況の中で召集されたものであり、本日、本院としても岸田内閣総辞職の通知を受領し、その旨、今朝九時三十分の議院運営委員会理事会で報告を受けたところです。
一方で、新たに選出された自民党総裁は、昨日の記者会見において、衆議院を解散し、十月二十七日に総選挙を行う意向を表明しています。
確かに、衆議院の解散に関する発言に際しては、内閣総理大臣に選出されればと留保を付していたのかもしれません。しかし、内閣総理大臣の指名については、議院運営委員会において、先ほども申し上げたとおり、つい先ほど決定の上、この本会議でその議事を行っているものであります。
内閣総理大臣の指名の投票が行われ、その結果を受けて内閣総理大臣に任命されるより前に、衆議院の解散について公の場で言及することに違和感を覚えずにいられません。新たに選出された自民党総裁の衆議院解散に関する認識に疑問を呈さざるを得ず、また、手続軽視、国会軽視とのそしりは免れません。
今回のような会見が許されるのであれば、国会において多数の議席を有しているからと、予算や法案の成立前に、国会審議を完全に無視し、それらの成立を前提とした内閣総理大臣による記者会見が開かれることにもなりかねませんが、新たに選出された自民党総裁のこれまでの発言、筋と手続にこだわることだったのではないでしょうか。
加えて、総選挙の期日を十月二十七日にすることありきで、そこまでの国会運営や選挙の管理執行に関する考慮に欠けていることも指摘せざるを得ません。
新たに選出された自民党総裁は、昨日の記者会見において、解散についての発表を急いだ理由に関し、選挙管理委員会の選挙準備の観点以外に理由はないと発言されたようですが、選挙管理委員会の選挙準備について考えるのであれば、むしろ、十月二十七日とした総選挙の期日を見直すことで十分な準備期間を確保できるようにするべきではないでしょうか。
選挙の管理執行に関する業務は自治体にとって相当の負担となります。この夏の災害からの復旧に追われている自治体もありますが、衆議院議員総選挙の執行準備をごく短期間に行うことを求めるがために、そうした復旧復興の動きに遅れが生じるようなことがあってはなりません。
また、総裁選挙への出馬会見においては、前回の衆議院解散について、衆参の本会議の質疑の後、解散に踏み切られたと言及された上で、できれば、これは総理大臣だけでやるものではございませんので、全閣僚出席型の予算委員会というものを一通りやって、この政権は何を考えているのか、何を目指そうとしているのかということが国民の皆様方に示せたその段階で、可能な限り早く信は問いたいと、問うべきだ、私はそのように考えますと明確に発言されています。
しかし、その上で提示された今期国会の会期は十月一日から九日までであり、前回の衆議院解散があった第二百五回国会の会期十一日間をも下回る、たった九日間にすぎません。内閣総理大臣の指名を受けた後、組閣や副大臣・政務官人事を行う日程を考慮すれば、衆参両院で一日半ずつ、合計三日間の代表質問を行うだけで十月九日を迎えることになってしまいます。
昨日の記者会見において、新しい総裁はこうおっしゃっています。衆議院、参議院におきます所信表明、それに伴います質疑というものはきちんと行うというものでございますとの発言もあり、慣習として定着している合計三日間の代表質問を短縮するようなことはよもやお考えになってはいないだろうとも思います。
そうなりますと、今期国会の会期中に予算委員会、どこで開会するんでしょうか。総裁選で発言していた国民に判断材料を示すことは達成できなくなり、明らかなる言行不一致であると言わざるを得ません。
また、国会の会期のほか、予算委員会や党首討論の開会については国会において決定するものだとも発言されているようですが、内閣総理大臣の指名を受けていない段階から国会の判断という常套句を使われるのはいかがなものかと考えます。むしろ、自民党総裁として、これまでの発言との整合性を踏まえて今後の国会対応について検討し、実行いただきたいと考えます。
本年六月二十一日に常会が事実上の閉会を迎えてから三か月以上経過し、八月十四日に岸田内閣総理大臣の自民党総裁選挙への不出馬表明があってからは特に、現に生じている国政の課題への対応は停滞していると言わざるを得ません。一方で、能登地方の豪雨を始めとした頻発する災害などに対しては、迅速な対処が必要です。
また、これまで議院運営委員会理事会で上訴の要否について繰り返し議論を行ってきた旧優生保護法訴訟に対する最高裁判所の違憲判決を受けた対応は必須です。仮に衆議院解散により再び国会が閉会するのであれば、その前に、予算委員会を開いて充実した議論を行うなどにより、山積する課題への対応の道筋を付ける必要があるのではないでしょうか。
さらに、政治不信の大きな原因ともなっている一部自民党議員の政治資金収支報告書への不記載等の問題にも目を向けなければなりません。
本院の政治倫理審査会においては、去る二月二十一日に参議院政治倫理審査会規程第一条及び第二条の規定に基づき三十二名の議員について審査の申立てが行われた後、三月八日には全会一致をもって審査を行うことが決定されました。しかし、申立てを受けた議員のうち三名からしか弁明の申出がなく、二十九名については出席及び説明が得られないままとなっています。
決してこれは個人をあげつらうものではありません。構造的な問題を明らかにして、二度とこうした事態を起こさせないための政治倫理審査会です。
衆議院においても同様に、四十三名の議員の出席が得られていません。この状態を放置することは、すなわち国会法第百二十四条の三に基づき政治倫理の確立のために設置された政治倫理審査会を無視し、もはや事案に真摯に向き合うつもりがないと言わざるを得ないことであるとは以前から指摘したとおりです。
衆議院においては、委員の申立ては会期の終了又は次の国会の召集によっては消滅しないことが先例に明記されていますが、衆議院解散があれば消滅する取扱いとなっているようです。このままこの問題に向き合うことなく、衆議院解散により事案を消滅させ、うやむやにしてしまっては、構造的な問題は明らかにならず、国民の政治不信に拍車を掛ける結果となりかねません。
新たに選出された自民党総裁が、政治資金について限りない透明性を持って国民に向けて公開をいたしてまいりますと出馬会見において発言し、自民党総裁に当選した際に、ルールを守る自民党を標榜したのは何だったのでしょうか。今期国会の召集を受け、自民党総裁として対象の議員に対し政治倫理審査会への出席を促すことこそ求められます。
こうした状況に鑑みれば、今期国会の会期を十月一日から九日までの九日間とすることは、国会軽視そのもの、かつ国会運営の常道から外れるものでもあり、立法府の立場から見れば到底容認できるものではないということを申し上げて、反対討論といたします。