国民民主党の浅野哲です。
私は、ただいま議題となりました岸田内閣不信任決議案について、賛成の立場から討論を行います。
現在、政治資金規正法に違反する行為を繰り返していた疑惑がかけられているにもかかわらず、現職の閣僚を含む複数の自民党所属議員がその説明責任を果たしておらず、政府と自民党に対する国民の不信感が極限に達しています。これまでの関係閣僚、関係議員の発言内容を見る限り、各位が把握している事実があったとしても、捜査への影響を理由に明言を避け続け、自己点検を理由に回答を先延ばししているような印象を与えており、その姿勢は、多くの国民の心に、政治家が保身に走っているのではないかとの疑念を抱かせています。
収入の不正申告による裏金のキックバックは、事実であれば明らかな違法行為であり、仮に民間企業でこのようなことが起きれば、粉飾決算や横領などの罪に問われ、社会的な信頼を失いかねない重大な事象であり、全社を挙げて真相究明と再発防止に最優先で当たるべき事案です。
にもかかわらず、政府、閣僚は、政務の立場であることを盾に回答を差し控える事態が続発し、岸田総理も、真相究明と再発防止という重要なプロセスよりも次の内閣人事に心が向いている現状を見るに、今の内閣は、国家の運営を担うという重責を果たせる状態とはとても思えません。
さらに、これまでの東京地検特捜部による捜査の中では、自民党安倍派に所属する議員の秘書らが、特捜部の事情聴取に対し、キックバックを収支報告書に記載しないのは派閥からの指示だったなどと証言しているという情報もあります。このような発言は複数確認されているとされ、自民党内でキックバックの裏金化が組織的かつ常習的に行われていた可能性も出てきました。
信なくば立たず。このような状況では、むしろ自民党政権を信任する方が難しいのではないでしょうか。
今回の裏金疑惑が発覚したことで、改めて思い返したことがあります。
この数年間、私たち国民民主党は、子供、子育て支援に関わる所得制限の撤廃や年少扶養控除の復活などと併せて、障害のある子供たちのための補装具費支給制度の所得制限撤廃を求めてきました。
子供は体の成長が早く、一年の間に何度も補装具の調整や更新が必要になることもあるそうです。ほかの子と同じように我が子にも新しい義足を買ってあげたい、私たちは、今から三年ほど前、障害のあるお子さんを持つお母さんやお父さんたちからこの思いを託されました。そして、この議場にいる立憲民主党の皆さん、公明党の皆さん、そのほか、それぞれの政党の議員の皆様、同様な声を届けられたのではないでしょうか。
所得制限撤廃に必要な予算は、多めに見積もっても二十億円から三十億円前後。私たちは、再三再四、委員会質疑などを通じて予算の確保を求めてきましたが、当時の政府は、制度の公平性や財政規律を保つ必要性等の理由を述べて、議論はほとんど平行線をたどりました。
さらに、インボイス制度、適格請求書等保存方式についても付言したいと思います。
インボイス制度は、小規模零細事業者、個人事業主と取引をした事業者が、仕入れ税額控除を受けるために、小規模零細事業者、個人事業主に対して、正確な適用税率や消費税額等を管理し、当該事業者に伝えるよう義務づけるものです。制度開始以前より、現場の事業者からは準備と対応に苦慮する声が届いていましたが、政府は、適切な会計業務の必要性があることを理由に、本制度は予定どおり本年十月に運用が開始されました。
これらの経過に対し、私たち国民民主党は、政府・与党には政府・与党の立場があり、財政規律を保ちながら限りある財源を割り振る責任があるという点については理解をし、建設的な議論を重ね、国民の声に応えられるような妥結点を見出せるよう、努力をしてまいりました。
しかし、国民には負担や我慢を強いている陰で、自民党内では、政治資金パーティー収入を過少申告したり、数千万円にも及ぶ裏金を手にした議員がいた事実が発覚しつつある今、当時の政府の答弁には、本当に国民に寄り添う人の心が宿っていたのかと疑いたくなるのは私だけでしょうか。
現在の岸田内閣は、こうした国民の疑念に応えられるだけの説明責任を果たしているとは到底思えません。そうである以上、岸田内閣不信任決議案には賛成以外の選択肢がないのであります。
今から三十五年前、リクルート事件以降の厳しい世論にさらされていた当時の自民党は、国民から向けられる不信感を払拭すべく、政治改革大綱を策定しています。その中には、以下のような記載があります。
「もとより、永年続いた制度の改革はけっしてやさしくはない。しかし、国民の政治にたいする信頼を回復するためには、いまこそ自らの出血と犠牲を覚悟して、国民に政治家の良心と責任感をしめすときである。」「かりに、現状のような派閥中心の党運営が続くならば、党が真の意味での近代政党、国民政党へ脱皮することは不可能である。」
三十五年前の教訓から得たこれらの認識は、今の自民党にどのような変化をもたらしてきたのでしょうか。
この議場内にいる全ての皆様に申し上げたいことは、今回のような疑惑は、国際社会の中核にある日本の政治史の中で大変恥ずべきことであり、二度と生じさせてはならないということであります。
今こそ、政治家の良心と責任感を国民に示すときと捉え、不信任案の可決、成立を起点として、迅速な真相究明と再発防止のための国会改革に本院全体が一丸となって取り組むことを心から望み、私の賛成討論といたします。
御清聴ありがとうございました。