日本共産党の赤嶺政賢です。
憲法審査会は、憲法改正原案を発議し、審査することを任務としています。今、国民の多数が改憲を求めていない中で、改憲につながる憲法審査会は動かすべきではありません。
問題は、自民党が国民の意思と関係なく審査会を動かし、改憲項目のすり合わせの場にしようとしてきたことであります。法制局から経過の説明がありましたが、二〇一五年六月四日の審査会で参考人として出席した三人の憲法学者が安保法制は違憲だと発言したのを機に、自民党は一年半の間、審査会を動かすことができませんでした。憲法を守れ、安保法制廃止という国民の怒りが広がるのを恐れたからであります。
ところが、二〇一六年の参議院選挙後に、安倍首相が二〇一二年の自民党改憲案をベースに議論を進める意向を示したのを機に、自民党は審査会を動かし始めました。さらに、安倍首相は、二〇一七年五月三日の憲法記念日に、自衛隊を憲法に書き込む具体的な案を示し、二〇二〇年を新しい憲法が施行される年にしたいと期限を区切って改憲議論を主導してきました。その下で、自民党は、九条改憲を含む四項目の改憲原案をまとめ、審査会に提示して議論を進めようとしました。
しかし、安倍首相が改憲に躍起になればなるほど、改憲に反対する国民の声は大きくなりました。安倍首相自身が、退陣を表明した記者会見で、国民世論が十分に盛り上がらなかったと認めざるを得ませんでした。
ところが、岸田首相は、任期中に憲法改正を実現すると繰り返し主張し、国会に条文案の具体化を進めるよう呼びかけました。
自民党は、ロシアのウクライナ侵略やコロナ感染の蔓延を奇貨として、九条改憲や緊急事態条項が必要だと主張し、改憲案の絞り込みを行おうとしてきました。国会議員任期延長の議論を先行すべきだという主張もありました。国民の支持はそれでも得られなかったのであります。
この間の経過で重要なことは、自民党がどんなに改憲を叫んでも、改憲を望む国民の声は多数になっていないということです。昨年十一月三十日のこの審査会でも、当時の石破委員から、改憲に取り組んでもらいたいと考えている国民は七%しかいないという発言がありました。
国民を無視し、最後まで任期中の改憲に固執した岸田政権は、自民党派閥の裏金問題に対する国民の怒りを前に退陣に追い込まれました。そして、今回の衆議院総選挙で、国民は自公与党の過半数割れという審判を下しました。自民党の改憲が国民の期待、国民の支持を得られていないことは明確です。にもかかわらず、政治権力を持つ側が改憲を喧伝し、国民に押しつけようとすることは認められません。改憲のための議論はやめるべきです。
次に、憲法問題を国会はどう議論すべきかです。
最大の憲法問題は、現実の政治が憲法の原則と乖離していることです。自民党政治の下で国民の基本的人権がないがしろにされている実態を、国会の予算委員会や各常任委員会で大いに議論すべきです。
今問われなければならないのは、憲法の上に日米安保条約があり、その下で主権と人権が踏みにじられていることであります。それが端的に表れているのが沖縄です。沖縄では、米軍による事件、事故が繰り返され、県民の命や暮らしが脅かされています。
昨年十二月、米兵が十六歳に満たない少女を誘拐し性的暴行を加えるという凶悪事件が発生しました。しかも、政府は、この事実を半年間も隠し、沖縄県にも伝えていませんでした。
政府は、沖縄県や県民の強い反対にもかかわらず、辺野古新基地建設を強行しています。憲法が保障する民主主義や地方自治を根底から破壊するものにほかなりません。日本国憲法の下でこの沖縄の実態を放置し続けることが、どうして許されるのでしょうか。
さらに、同性婚や選択的夫婦別姓、学費や教育費の無償化、貧困と格差、冤罪と再審請求、外国人の人権など、全てが憲法問題です。憲法の原則に逆行し踏みにじられている政治と社会の実態を放置することは許されません。
私たちは、政治家は憲法を変える議論ではなく憲法に反した現実を変えるための議論をするべきだと重ねて強調して、発言を終わります。