国民民主党の長友慎治です。
私は、会派を代表し、ただいま議題となりました岸田内閣不信任決議案に賛成の立場で討論を行います。
賛成の最大かつ唯一の理由は、岸田総理、あなたが、国民の政治に対する信頼を嫌というほどまでに失墜させたことです。
行政府の長として、そして与党自民党の総裁として、自らもおっしゃっているとおり、火の玉になって、先頭に立って、信頼ある政治を推し進める立場にあります。しかし、実際はどうでしょうか。私には、火だるまになって、たった一人で迷走しているようにしか見えません。進み方も方向も、全く間違っています。
当選一期の野党議員である私にですら、地元を歩く中で、裏金、幾らもらっているんだなどと容赦のない言葉が浴びせられます。志を持って真っ当に政治に臨む多くの国会議員、地方議員、それを支えてくださる多くの支援者、そして国民の信頼を損ねた責任は余りにも重大である自覚はあるのでしょうか。
一昨日、衆議院で与党と日本維新の会が賛成した政治資金規正法の一部を改正する法律案が、参議院の政治改革特別委員会で委員長職権によって採決され、昨日の参議院本会議でも、与党のみの賛成で可決されました。裏金の真相究明はされず、党幹部が非公開、非課税で自由に使える政策活動費が合法化されるという、国民の嘲笑を買う悪法が成立したことになります。
国民をだますような今回の改正を、衆参で賛成した政党以外、一体誰が望んだのでしょうか。しかも、自民党そして公明党は、あろうことか、この改正案に自ら附帯決議をつけました。他の野党は対案も出し、慎重かつ十分な審議に応じる姿勢は今なお示し続けています。法案が十分でないと思うのであれば、再度修正案を出し直せばよいではないですか。
そもそも、失墜した国民からの信頼を回復するための政治改革でなければならなかったはずです。しかし、問題を起こした自民党自身に当事者意識がなく、真摯な反省すら見られません。
私たちは、再三再四、衆議院、参議院での丁寧な議論を通して、政治と金の問題の再発防止を強く訴えてきました。私も政治改革特別委員会の委員の一人として現場を預かりましたが、総理が五月中の衆議院通過にこだわり、細部を詰めることなく、自身の意に沿う一部の党とのみの合意を図り、成案を得るための幅広い十分な議論の場を設けず、強行スケジュールを押し切ろうとしたために、政治改革特別委員会の場は大混乱しました。
この期に及んで自民党は何をやっているんだと国民はあきれたのではないでしょうか。そもそも自民党は議論をする気すらなかったと、国民は見抜いています。
また、自民党派閥、清和政策研究会が政治資金パーティーの収入の一部を裏金化した事件について、一昨日行われた安倍派事務局長の被告人質問で、派閥側から議員側への還流は、二〇二二年八月の幹部会議で継続が決まったとの証言が出ました。
政治倫理審査会や会見で同様の説明をしたのは、安倍派座長であった塩谷立元文科大臣のみです。下村博文元文部科学大臣、西村康稔前経済産業大臣、世耕弘成前自民党参議院幹事長の三議員の説明との食い違いが改めて浮き彫りになりました。六月十八日の公判では、この四人に同席していた松本事務局長がはっきりと、二〇二二年の八月の会合で再開を決めた、幹部の一人に頼まれたと証言をしました。この証言が正しければ、下村博文元文部科学大臣、西村康稔前経済産業大臣、世耕弘成前自民党参議院幹事長の三人は、うそをついていたことになります。
党や派閥の幹部が、これでいいんだと思って国会の委員会の場でも平気でうそをつく。多くの所属議員がこれだけの大量の法令違反を犯しても、まともに処分がされず、誰も何の責任も取らない。若手はそれを見習い、あしき習慣が継承される。このように党内のガバナンスも崩壊する中で、恥も外聞もなく党内の権力争いに終始する。これが今の自民党です。そのトップが、岸田総理、あなたです。
問題を起こした議員、関係者が説明責任を果たしていないことも、全く理解できず、大問題です。自民党は説明責任を果たし、再発防止のためにも、原因究明、真相究明に真摯に取り組むべき立場にあります。それにもかかわらず、なぜ派閥の裏金の問題が起きたのか、真相や原因を明らかにしないまま、衆議院でも参議院でも強行に採決することを優先した岸田総理の罪は重く、中身はざる法のまま改正案を成立させた自民党、公明党の両党は国民の審判を仰ぐべきであり、国民からの厳しい鉄槌が下されるべきです。
三十年前の平成の政治改革が行われたときには、問題を起こした当の自民党の中から、政治の在り方そのものを変えていくべきという声が上がったと聞いています。内外の情勢が激動する中で政権交代も必要だとの声が、何十年も与党だった自民党の中から出てきて、政治改革大綱がまとめられました。しかし、今回も全く自民党に改革の姿勢が見られません。
今、私たちを取り巻く内外の情勢は、平成の当時と同じように大きな転換期にありますが、日本の政治はこのままでよいのかという大きな問いかけもなく、応急措置にもならない、むしろ政策活動費の領収書を十年後に公開することにお墨つきを与え、結局は誰も罰せられることがない悪法を通過させた岸田内閣は、不信任以外の何物でもありません。
国民も同じように思っています。岸田内閣の支持率が政権発足以降最低の一九・一%になったことが、ANNが六月十五日、十六日に行った世論調査で明らかになりました。内閣支持率が二割を切るのは、二〇一二年に自民党が政権に復帰してから初めてです。さらに、政治資金規正法の改正案を評価しないと答えた人は五九%、評価するは二二%しかいません。総理、政府と自民党に対する国民の不信感が極限に達しているこの状況をどのようにお考えでしょうか。
昨日の党首討論で我が党の玉木代表が問うた言葉を、いま一度、岸田総理に問いたい。世界に冠たる日本をつくるには、世界に範たる日本である必要がある。範を示すべく、総理自ら職を辞し、トップとしての責任を果たすべきです。
民、信なくば立たず。国民の政治に対する信頼を取り戻すには、もはや小手先の対策では全く足りません。政党改革、国会改革、同時に選挙制度改革を進め、国や国民が抱える諸課題を建設的な議論と提案で解決していかなければなりません。
しかし、現在の岸田内閣の姿勢は、野党の意見に真摯に耳を傾けるどころか、聞いたふりをするだけで、最後にはうそをつく内閣です。これでは、ますます政治不信は広がるばかりです。やはり政権交代が必要だと、今通常国会の岸田内閣の対応を見て確信しました。
不信任案の可決、成立を起点として、国会改革に全ての政治家が一丸となって取り組むことを心から望み、私の賛成討論といたします。
御清聴ありがとうございました。