総務大臣を拝命しました村上誠一郎であります。
まず、本年に入り、能登半島での地震や大雨を始め、災害が多発し、全国各地で甚大な被害が発生しました。犠牲となられた方々に哀悼の意を表し、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
総務委員会の御審議に先立ち、所信を申し述べます。
我が国の人口が減少に転ずる中、経済、財政など様々な分野で難問が山積する待ったなしの状況であります。
私は、国民生活に密着した分野を預かる総務大臣として、国民や地方を守り、未来をつくるといった内閣の基本方針の下、全力で取り組む所存です。
このような決意の下、当面特に力を入れて取り組みたい政策の方向性について、一端を申し述べます。
まず、能登半島地震の教訓を踏まえて国民、住民の安全、安心の確保に向けて取り組みます。
災害時にも情報を確実に届けられる環境を整備するため、携帯電話基地局やケーブルテレビ網等の通信、放送インフラの強靱化、被災地における通信確保と被災地状況の把握に官民連携で対応する体制の計画的な整備などを図ります。
5Gの都市、地方での一体的整備や地方における光ファイバーの整備、データセンターの地方分散や海底ケーブルの整備、非地上系ネットワークの展開、自動運転早期導入に向けた通信環境の整備など、先進的なデジタル基盤の整備を進めます。
NTT法を含む通信政策の在り方について、ユニバーサルサービス、公正競争、経済安全保障、国際競争力の四つの観点から、国民、利用者の目線で検討を進めます。
また、社会経済活動における電波利用の飛躍的な拡大を目指し、新たな周波数割当て方式の導入に向けた検討などに取り組みます。
災害情報を共有するLアラートの信頼性向上、他の防災システムとの連携強化に向け取り組みます。
我が国では、災害が激甚化、頻発化する中、最前線で国民の生命財産を守る消防の果たす役割はますます増大しています。
消防防災力の充実強化を図るため、緊急消防援助隊や常備消防の体制強化、消防団を中核とした地域防災力の向上やDX、新技術の研究開発の推進に全力を挙げます。
マイナンバーカードを活用した救急業務の円滑化については、今後、全国の消防本部を対象とした実証事業を実施します。
あわせて、Jアラートの的確な運用や弾道ミサイルを想定した住民避難訓練などにより、国民保護体制の整備に万全を期すとともに、国民への周知促進を図ります。
能登半島地震に係る地方団体間の職員派遣については、これまで短期の職員派遣で延べ十一万五千九百五十九人の職員に応援に入っていただき、中長期の職員派遣で三百十九人の職員が順次派遣されています。
今後も被災団体の人的ニーズをよくお伺いしながら、必要な支援を行います。
また、被災地の復旧復興に向け、被災団体の財政運営に支障が生じないよう、地方財政措置を講じ、適切に対応します。
さらに、平時から地方団体等との連携を強化し、特別行政相談活動に引き続き取り組みます。
第二に、地域経済の好循環と持続可能な地域社会を実現するための地方行財政基盤の確立と地域経済社会の活性化を進めます。
人口減少下において、地域の担い手不足が深刻する中で、今後とも地方行財政の在り方を持続可能にするため、現場の具体的な課題を踏まえた対応について検討します。
地方への人の流れの創出、拡大は重要な政策テーマです。
地域おこし協力隊について、隊員数を令和八年度までに一万人へ拡充することを目標に、戦略的な情報発信や隊員等へのサポート体制を強化するとともに、地域活性化起業人について、更なる活躍を推進します。
また、ローカル一万プロジェクトについて、支援件数の拡大や地域ネットワークづくりの取組、地域の経済好循環を創出、拡大します。
さらに、特定地域づくり事業協同組合や地域運営組織への支援等を推進するとともに、過疎地域の持続的発展に向けた取組を支援します。
デジタルの力を最大限に活用し、地方団体や地域社会におけるDXを推進するとともに、それを支える人材の確保、育成に取り組みます。
DX推進の基盤となるマイナンバーカードについては、これまでの地方団体の御尽力により、十一月末時点で保有枚数は九千五百三十四万枚を超えました。今後も、マイナンバーカードの取得を希望する国民が円滑に取得できる環境の整備を進めます。
DXによる持続可能な地域社会の実現に向け、AI等のデジタル技術を活用した地域課題解決のための取組を支援し、地方創生の好事例の創出や、また、その横展開に取り組みます。
令和七年度までの自治体情報システムの標準準拠システムへの移行に必要な経費を確保し、各地方団体における円滑、安全な移行に向けて取り組みます。
これらの取組を支える地方公務員については、優良事例の横展開及び地方財政措置により、人材育成、確保の取組を推進します。また、国家公務員における給与制度の整備を踏まえ、地方公務員給与についても、現下の人事管理上の重点課題に対応するため、適切に見直しを行うよう要請いたします。さらに、部分休業の拡充を内容とする地方公務員育児休業法の改正案を今国会に提出いたします。
また、令和六年度補正予算案に関連し、経済対策に必要となる財源を措置することなどを内容とする地方交付税法及び特別会計に関する法律の改正案も今国会に提出いたします。
令和七年度の地方財政については、社会保障関係費、人件費の増加や物価高などが見込まれる中で、地方団体が、様々な行政課題に対応しつつ、行政サービスを安定的に提供できるよう、骨太方針二〇二四を踏まえ、交付団体を始め地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源総額について、令和六年度の地方財政計画の水準を下回らないよう、実質的に同水準を確保します。
地方税制については、地方分権推進の基盤となる地方税の充実確保とともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に向け取り組みます。
また、納税者の利便性の向上と地方団体の課税事務の効率化等を図るため、地方税務手続のデジタル化を進めます。
行政相談において、国・地方共通相談チャットボットの機能改善を利用者目線で進めるとともに、地方団体、郵便局などと連携し、地域課題の解決を図ります。
第三に、信頼できる情報通信環境の整備を進めます。
インターネット上では、偽・誤情報や誹謗中傷等の権利侵害情報の流通、拡散が深刻化しています。本年成立した情報流通プラットフォーム対処法の早期施行に向けて取組を進めます。
さらに、利用者のリテラシー向上や偽・誤情報対策技術の研究開発、国際連携協力なども含めた総合的な対応を進めます。
また、国民の知る権利を満たすなど社会的役割が期待される放送を持続可能とする観点から、放送の将来像と制度の在り方について更なる検討を進めます。
IoT機器のセキュリティー対策の強化、人材育成や情報分析など、サイバーセキュリティー対策の強化に努めます。
第四に、国際競争力の強化と国際連携の深化を進めます。
AIについて、我が国が国際的なルール作りを主導し、世界初の包括的政策枠組みに合意した広島AIプロセスの成果を踏まえ、賛同国の増加や企業等による国際行動規範への支持拡大を図ります。
研究開発やその成果の社会実装に当たっては、情報通信研究機構を産学官連携の中核とすべく、体制等の強化を進めます。
さらに、情報通信研究機構の保有するAI学習用の良質な日本語データを整備、拡充し、国内の事業者等に提供することで、AI開発力の強化を図ります。
安心して生成AIの開発、提供、利用を進められるよう本年策定したガイドラインを、国内外に向け広く普及啓発を図ります。
AI社会を支えるオール光ネットワーク等の次世代情報通信基盤や、宇宙通信、量子暗号通信を始めとした先端技術の社会実装や海外展開を見据えた研究開発、国際標準化を推進します。
我が国から幹部職員を輩出している国際電気通信連合、アジア・太平洋電気通信共同体等の国際機関と緊密に連携します。
我が国の放送番組について、海外に展開するための制作支援や人材育成、適正な対価還元に向けた取引の適正化促進など、番組の制作、流通関係の整備を強力に推進します。
安全で強靱なデジタルインフラの構築に関する国際連携を深め、5Gや光ネットワークを始めとするデジタルインフラの海外展開を進めます。
国際郵便に関するルールを定める万国郵便連合において、我が国の目時政彦氏を二期目の国際事務局長の選挙に擁立しております。
引き続き、我が国の主導的な立場を維持強化すべく、目時氏を支援いたします。
第五に、国の土台となる社会基盤の確保を進めます。
郵政事業については、郵便局のユニバーサルサービスを確保するとともに、地域の重要な生活インフラとしての役割を拡大し、地方を守り、持続可能な地域づくりを推進します。
また、郵便事業の安定的な提供を将来にわたって確保する観点から、郵便料金に係る制度の在り方について検討を進めます。
選挙については、主権者教育の推進や投票環境の整備について今後努めます。
また、政策評価、行政運営改善調査、行政相談の各機能を連携させ、各府省の政策立案、改善の取組を後押しします。
さらに、行政手続法や行政不服審査法等、基本的な法制度の適正な運用を確保するとともに、独立行政法人のDXの推進、業務改革人材育成等を通じた行政運営の不断の改善を進めます。
公的統計については、基本計画に基づき、総合的な品質向上、時代の変化に対応した有能な統計の整備、人材育成、デジタル化推進など、改革を進めます。
また、各種政策の基盤となる毎月の経常調査や来年の国勢調査などを確実に実施します。
以上、所管行政の当面の課題と政策の方向性について申し上げました。
政務、事務方が一丸となって全力で取り組んでまいるつもりであります。委員長を始め理事、委員各位の皆さん方の御指導と御協力をよろしくお願いします。
どうも失礼しました。