防衛大臣の中谷元です。小野田委員長を始め、理事及び委員の皆様方に防衛大臣としての御挨拶を申し上げます。
今、我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑なものになっています。
中国は、国防費を急速に増加をさせ、軍事力の質、量を広範かつ急速に強化をしています。
このような軍事力を背景として、中国は、尖閣諸島周辺を含む東シナ海、日本海、西太平洋など、我が国周辺全体での活動を活発化させるとともに、近年、台湾周辺で大規模な軍事演習を数回、複数回実施するなど、台湾に対する軍事的圧力を高め、さらに、南シナ海での軍事拠点化などを推し進めております。
こうした中、本年八月の中国軍機による領空侵犯や九月の中国海軍空母による我が国領海に近接した海域での航行など、我が国周辺海空域において短期間にこうした事案が立て続けに起きているということに強い危機感を有しております。
このような中国の対外的な姿勢や軍事動向などは、我が国と国際社会の深刻な懸念事項であり、我が国の平和と安全及び国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化する上で、これまでにない最大の戦略的な挑戦となっています。
北朝鮮は、体制を維持するため、大量破壊兵器や弾道ミサイルなどの増強に集中的に取り組んでおり、近年は、低空を変則的な軌道で飛翔する弾道ミサイルの実用化を追求するとともに、ICBM級弾道ミサイルの発射を繰り返し強行しています。
北朝鮮は一貫して核・ミサイル能力を強化をしていく姿勢を示しており、今後も、各種ミサイル発射や衛星打ち上げ、核実験などの更なる挑発行為に出る可能性があると考えられます。
このような北朝鮮の軍事動向は、我が国の安全保障にとって、従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっています。
ロシアは、ウクライナ侵攻を、ウクライナ侵略を継続するとともに、我が国周辺においても北方領土を含む極東地域において、新型装備の配備や大規模な軍事演習の実施など、活発な軍事活動を継続しています。
本年九月には、ロシア軍機が三度にわたって我が国領空を侵犯しました。このような行為は、我が国の主権の重大な侵害であるだけではなく、安全を脅かすものであり、全く受け入れられるものではありません。
さらに、近年は、中国とともに艦艇による共同航行や爆撃機による共同飛行、各種訓練を実施するなど、軍事面での連携を強化をしており、先日も、二日間にわたって我が国周辺での共同飛行を実施をしました。
こうしたロシアの軍事動向は、我が国を含むインド太平洋地域において、中国との戦略的な連携と相まって、防衛上の強い懸念となっています。
また、ロシアによるウクライナ侵略が継続する中、北朝鮮はロシアと軍事面での協力を強化をしております。
北朝鮮兵士のロシアへの派遣やウクライナに対する戦闘への参加など、最近のロ朝軍事協力の進展の動きは、ウクライナ情勢の更なる悪化を招くのみならず、我が国を取り巻く地域の安全保障に与える影響の観点からも、深刻に憂慮すべきものです。
このように、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、国民の命と平和な暮らし、そして我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くため、防衛力の抜本的強化を速やかに実現させる必要があります。
スタンドオフ防衛能力や統合防空ミサイル防衛能力といった将来の中核となる能力を強化を、強化するとともに、非対称的な優勢を獲得するための無人アセット防衛能力や領域横断作戦能力の強化、さらには、迅速な意思決定を行うための指揮統制・情報関連機能の強化に取り組むほか、今年度末に統合作戦司令部を新設します。
また、部隊が迅速かつ粘り強く活動するためには、機動展開能力や持続性、強靱性の強化も重要です。今年度末に自衛隊海上輸送群を新編するとともに、現有装備品を最大限有効に活用するため、可動数向上や弾薬、燃料の確保、主要な防衛施設の強靱化への投資を加速してまいります。
また、既存の国際秩序への挑戦が続く中、こうした防衛力の抜本的強化に加え、同盟国、同志国等との協力、連携を深めていくことが不可欠です。
日米同盟は、我が国の安全保障政策の基軸であり、その抑止力、対処力の強化に向けた具体的な取組を着実に進めてまいります。
あわせて、普天間飛行場の辺野古移設を含む在日米軍再編を進める中で、抑止力の強化を図りながら、沖縄を始めとする地元の負担軽減を図るために全力で取り組みます。
米国のオースティン長官とは、就任以来、三度会談を実施をし、日米同盟の重要性について確認したところであり、本日も四度目の会談を予定をしています。
トランプ次期政権との間でも、緊密に意思疎通を行い、日米同盟を新たな高みに引き上げるため、努力をしている、していく考えです。
同時に、日米韓や日米豪といった日米を基軸とした多国間協力の発展もこれまで以上に進めてまいります。
そして、自由で開かれたインド太平洋というビジョンの実現に資する取組を進めるため、多角的、多層的な防衛協力・交流を積極的に推進します。
本年十月には、日本の防衛大臣として初めてNATO国防相会合に出席をし、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分であるとの共通認識を多くの国と共有しました。さらに、初開催となったG7国防相会合にも出席をし、地域情勢や防衛力の基盤について幅広い議論を行いました。先月には、拡大ASEAN国防相会議に参加をし、初となる日米豪比韓防衛相会談を含め、各国との防衛相会談を実施をしました。
引き続き、こうした防衛相会談を積極的に実施してまいります。
加えて、現在、我が国は日英伊三か国共同での次期戦闘機の開発を進めております。このプログラムは、欧州及びインド太平洋地域の平和と安定のために不可欠な極めて重要なものであり、三か国で緊密に連携をしながら進めていく考えです。
なお、地域の安全保障環境が厳しさと複雑さを増す中、日韓、日米韓の連携がますます重要であり、国際社会の様々な課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国である韓国における今般の動きについては、日本政府として、引き続き特段かつ重大な関心を持って事態を注視していきます、注視しています。
また、防衛生産・技術基盤は、言わば防衛力そのものと位置付けられるものであり、その強化は必要不可欠です。
昨年施行された防衛生産基盤強化法に基づき、防衛生産・技術基盤の強靱化に向けた施策を引き続き力強く進めてまいります。
そして、豪州政府が進めている、進める次期汎用フリゲートの最終候補に、我が国の「もがみ」型護衛艦の能力向上型である令和六年度型の護衛艦が残りました。最終選考に向けた良い提案ができるように、関係省庁としっかり連携をし、官民一体となって取り組んでまいります。
最後に、人的基盤の強化も待ったなしの課題です。
防衛力の中核は自衛隊員であり、少子化による募集対象人口の減少などを背景とした厳しい募集環境の中においても、自衛隊員を安定的に確保していくことが不可欠です。
現在、石破総理を議長とする自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議において関係閣僚とも議論を行っているところですが、関係省庁が連携して取り組むべき方策の方向性と令和七年度予算に計上すべき項目を早期に取りまとめる考えであります。
また、人事院勧告の趣旨を踏まえ、自衛官の俸給月額及びボーナスを引き上げるなどの改定を行うため、防衛省職員の給与等に関する法律を改正するための法律案を今国会に提出をしました。
委員各位におかれましては、御審議のほど、よろしくお願いいたします。
以上、防衛省・自衛隊が直面する課題に対して、防衛大臣として、全身全霊、職務に邁進する所存であります。
皆様におかれましては、一層の御指導、御鞭撻を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。