これは、経営体の損益分岐点によって全く違うと思います。八千円でも十分利益が出るというような農家も出てきました。先生の御地元でもいらっしゃるんじゃないかと思います。しかし、中山間地域では、一万三千円ぐらいはないと駄目だとか、もっと、一万五千円は欲しいというところもあります。ですから、それぞれ地域によって状況は違います。そして、この価格が高いか安いかについて、私の立場でコメントすることはやはり不適切だと思います。
農林水産品に限らず、全ての物の価格は市場の需給のバランスによって決まる、これはやはり資本主義経済における価格決定のプロセスとしては正しいんだろうと思います。ですから、引きが多ければ高くなります。私は、やはり高過ぎるなと思いますよ、正直なところ。何でここまでいくのかなとは思います。ただ、農家に目を向ければ、これはいいことだというふうに思います。
ただ、午前中も申し上げましたように、農林水産省としては、消費者の方々に安定的に食料を供給するという義務も負っておりますので、消費者目線で考えれば、やはりオーバーシュートするというのは決していいことではない。
ただ、今年の、決してマスコミが悪いと人のせいにするつもりはありませんが、ただ、私もどこかで申し上げましたけれども、スーパーで一生懸命買う。南海トラフの臨時緊急情報ですか、あれが出たときに、八月八日だったと思いますが、消費者の方々が家庭を守ろうということで米を買いに走られた。それは決して悪いことじゃないですよ。
ただ、お米を三か月分も四か月分も買っても、傷んでしまいますからね。おいしく食べられる米は、精米したら一か月なので、そういうことをもうちょっとちゃんと言うべきだったんじゃないかと思います。気持ちは分かりますが、買ってもおいしくないですよ。下手をすると、いろいろ黒い、ゴマみたいな虫が湧くんですよ、名前は忘れましたが。そういうこともあるんだよということもアナウンスすべきだったなと思います。
ただ、備蓄米を出すべきだったなという議論も一部であったようですが、もし出したとして、米価がぐっと下がったとします。そうすると、生産者の目から見ると、国が介入したせいで来年の概算金の水準が下がったじゃないかというふうに多分思われると思います。
そして、卸の米を扱う業者の方々も、我々が利益として得られるであろう利益が逸失利益として出てしまった。国が介入しなければこれぐらいもうかったはずなのに、国が放出したせいでこれだけ損しちゃったというふうに受け取られかねないという部分もあります。
ですから、米は主食ですから、安定することがベストです、安定することが。合理的な価格形成がいかに難しいかは私も痛切に感じています。どっちの立場に立つかということが難しいですが、そのバランスを取りながら、市場というものは上にも下にもオーバーシュートしながら収れんされていくというのが市場の価格形成の仕組みですから、そういうふうになっていくのかなというふうに考察いたしております。