まず、政治改革、信頼を取り戻すということが何よりも大切であります。是非、たとえ政治を志す人たちがお金がなくても、縁故に政治家がいなくても、それでも志でしっかり政治に参加できる、そのような体制を是非与野党で考えていただきたい。そして何より、やはり政治と金の問題、特に企業・団体献金の問題については、国民の皆さんが納得いく形の結論を得ていただきたい、そのように思っています。
政治改革の議論については、この後の山下議員の質問の中に譲りたいと思っていますので、私は主に経済対策についてお話をしたいと思います。
今総理からお話がありましたが、今回、私ども、少数与党として、実は政調会長として、各党に今回の経済対策についての様々な協議をお願いいたしました。立憲民主党さんとも行いましたし、維新の会さんとも行いました。そして国民民主党さんとも行いました。その中で、繰り返し議論をしていく中で、例えば国民民主党さん、あれ、よくよくお話を聞いてみると、これは私たちと同じ考えを持っているんじゃないか。
実は、自民党は今までずっと、賃金と所得を上げるということ、これをずっと一貫してやってまいりました。国民民主党さんは、手取りを増やす、そういうことをやってまいりました。よく考えてみると、私どもがやってきたのは、とにかく賃金を上げていくということ。賃金を上げるということで、結果としてこの間の手取りが増えていくという、これが私たちが考えてきたことです。
今回、国民民主党さんも手取りを増やすと言っていますが、ちょっと私たちと違うのは、同じ手取りを増やすのでも、所得が上がらないんだったら、むしろ税金や社会保険料を下げていって、これで手取りを増やしていくというお話だったと考えます。ただ、これをもしやっていくと、ずっと税金は減っていくし、社会保険料、年金も将来不安になるということで、やはり手取りを増やすためには、私どもは、所得を上げていくということ、最終的にはこれを上げていくということが一番大切だと思っています。
そして、手取りを上げる、所得や賃金を上げるということで私どもが議論する中で、ちょっと衝撃なことが分かりました。
先月、十一月の下旬ですが、政府から出された統計です。実は、これは企業別に見た労働分配率という表ですが、この図の二を見ていただきたいと思います。
二〇〇一年と二〇二三年を比較して、日本の大企業、営業利益は、二〇〇一年は十七・一兆円、そして二〇二三年は四十三・五兆円と、相当上がっています。また、その下の5にあります経常利益、これも二〇〇一年は十五・三兆円、そして二〇二三年は六十四兆円になっているんです。すごく増えているんです。
ところが、人件費、2を見てください。二〇〇一年は五十二兆円、二〇二三年は五十三・七兆円、この二十二年間でほとんど増えていない。では、このもうけはどこに行っているのか。恐らく、海外投資に行っているかもしれないし、企業の内部留保かもしれません。
そしてもう一つ、一番下の6、配当です。配当が、三・一兆円が二十五・七兆円になっています。
私は、今まで日本の経営者というのは、社員を大切にする風土がずっとあったと思っていました。ところが、今この表を見て、残念ながら、そのもうけが働いている人に行くのではなくて、むしろ株主や、あるいは内部留保、海外投資に行っているのではないか。これをしっかり直さなければ、私は、本当の意味で賃金も所得も上がっていかない、そう思っています。
そして、こちらの図の一を見ていただきたいんですが、実はその性格は大企業ほどあるんです。大企業ほど、どんどんどんどん、もうけを賃金に使っていない。そして中小零細は、やはり、もうかったものはしっかり人件費として還元をしている。これをしっかり回していくことが私は大事だと思っています。
考えてみると、例えば、自動車王と言われたフォードさん、この方は日当を二ドルから五ドルに当時上げたそうなんです。何でいきなりこんなに給料を上げたか。自分たちが造っているT型フォード、この自動車を、造っている社員が、給料をしっかりもらって買えるようにする。実は、車を買えるようになって、車がまた売れる。そして、車がたくさん売れるから、どんどんコストが下がって、また買いやすくなる。これで実は自動車王国ができていったわけです。
そして、私たち日本でも、例えば経営の神様と言われる松下幸之助さん、この人は、賃金を上げて社員の待遇をよくする。そして、その社員が冷蔵庫や洗濯機やテレビを買えるようにする。これでぐるぐる回っていったんです。
実は、賃金を上げることは、結果として自分の会社のプラスになる。これを今まで日本の経営者や世界の経営のリーダーはやっていました。もうけが出たとき、誰のおかげでしっかりもうかったか。当然、投資家も必要です。そして、優秀な経営者も必要です。ですが、何より必要なのは、懸命に働いている労働者なんです。この人たちの賃金と所得を上げていないから、今の好循環がまだ回り切っていない。私は、是非このことをしっかりお願いしたい。
とともに、実は、大企業だけで支えられているわけじゃないんです。総理も私も大好きな一〇式戦車。戦車は、千の会社が集まってその部品や素材を提供しているからセンシャなんです。関連企業は千あるんです。この人たちの、例えば、素材費が上がった、人件費が上がった。発注した分も、この値上がり分を想定して上げていかなければ、最終的には中小零細企業の賃上げにもつながらない。
是非、この好循環を回すために、どのような政策で、大企業がある面では抱えている多くの利益や、そして、今まで海外にしか向いていなかった投資を国内に向けるか。そして、何より賃金を上げていくか。その考え方について、石破総理にお伺いいたします。