私は、本当にこれはすごいところまで踏み込まれたというふうに思っております。
ここまでやらなきゃいけない理由は、やっぱり日本の建設産業は重層下請になっていて、みんなが悪いわけではないですけれども、その中で、下請関係、その重層化の中で、中抜きとかピンはねとかですね、それが労務費にしわ寄せ行くということで、現場になかなか払われないという、削られるということですね。
つまり、この表のピンクの部分ですね、労務費、これがずうっと守られて、現場、末端の現場まで払われていくかどうかと。この場合はその標準労務費を設定していただいて、それを払われるかどうかいろんな点でチェックをされるということでございます。問題は、このピンクの部分が現場まで払われるかということなんですね。
今からもう三十年ぐらい前になりますけれど、私、建設の組合にいたときに、なぜ現場でどんどんどんどん削られて払われないのかと、欧米はどうなっているのかと、ヨーロッパとかアメリカはですね。それで調査に行きまして、特にドイツ、アメリカ行きまして、で、分かったんですけれども、なぜ日本はピンはねされて向こうはされないのかと。まあ向こうも少々あるんですけど、基本的にされないんですよね。それはどういう仕組みかといいますと、産業別の労働協約というのが、アメリカも、形は違うんですけどね、ドイツもヨーロッパもあるんですよね。
つまり、建設業団体、建設業の使用者側の団体と労働組合ですね、労働組合の全国組織が、一年に一遍とか国によっては三年に一遍会って、現場の技能労働者の技能に応じた賃金、一日当たりの時給ですけどね、これ決めるんですよね。地域ごとに毎年それに上乗せして決めるというような仕組みがあるんで、要するに、労使で決めた賃金が払われるということが保証されているわけですね。したがって、このピンクのところがずっとこれは守られるんですよね。もしそれ守らなきゃ、人が来ない、仕事ができない、工事請けても進められないとなりますので、これは必ず守られるんですね。
それはやっぱり労使の労働協約、産業別の労働協約、特に建設関係というのは毎回現場に集まるわけですよね、で、また散らばっていくわけですよね。工場内じゃないんですよね、会社の中じゃないんですよね。だから、どこで働いても守られるような、その賃金を守る仕組みがあるわけなんですね。
そういうことを念頭に置きますと、この労務費を現場まで払われる、ここまで踏み込まれたというのは大変すごいことだなと思います。それが、日本の場合は、労働組合もそんな力ありませんし、まだまだそこまで行きませんけれど、どうやってそこに近づけていくかですね。公共事業から確保していくとか、公契約法とかですね、そういうアプローチを考えますと、こういう踏み込んでいただいたことは、これは大変大事かなと思っております。
こういうことが守られていく中で、今回はあれですよね、中央建設業審議会ですから、公の方からといいますかね、守っていこうですけど、ヨーロッパもアメリカも、労使だけではなくて公も絡みます。公も絡んで政労使でやりますので、そういう点では、頑張ってこの方向を進めてもらいたいと思っております。
その上で、とにかく頑張ってほしいんですけど、目の前、今ある事態を少しでも改善するというのが大事でございます。その点では、こういう政策の効果を知るためにも、現場の実態調査、どうなっているかというのを、常に政策の効果の問題もありますので、国交省としても、建設労働者の賃金の実態調査を、今まで幾つかやっていらっしゃいますけど、ちょっと重視をして、政策出すなら裏付けとしてこの重視をしていく必要あると思うんですが、調査の点ではいかがでしょうか。