私は、日本共産党を代表して、石破総理に質問します。
冒頭、石川県能登の豪雨災害で亡くなられた方々に深い哀悼を申し上げ、被災された方々に心からのお見舞いを申し上げます。
二度目の避難に多くの被災者が苦しんでいます。にもかかわらず、避難所での温かく栄養のある食事の提供やプライバシーの確保などで、一月の震災の教訓が生かされておらず、見捨てられたとの声も上がっています。直ちに改善することを強く求めます。浸水した仮設住宅の早期改修や安心できる場所への仮設住宅の建設など、住まいの確保への支援の強化を強く求めます。直ちに補正予算の編成が必要だと考えますが、いかがですか。
旧優生保護法の違憲判決を受け、本日の本会議で謝罪決議と被害補償法を可決しました。引き続き、当事者である障害者の皆さんの声を聞き、真摯な反省の下に検証を行い、優生思想を根絶することは、政府と国会に課せられた重要な責務であります。答弁を求めます。
私は、総理の政治姿勢の基本について、三つの点を質問いたします。
第一は、腐敗政治をなくし、政治に信頼を取り戻すという問題です。
まず問いたいのは、総理自身の言行不一致の問題です。
あなたは、自民党総裁選で、国民に判断してもらえる材料を提供するのは新しい総理の責任だ、本当のやり取りは予算委員会だと繰り返しました。ところが、総理に就任すると、前言を覆し、あさってにも解散を強行するとしています。
解散・総選挙は民主主義の根幹に関わる大問題です。そうした大問題で、数日前の自らの発言を平気で覆す。これでは、総理が今後どんな発言をしようと、国民はそれを信用することができなくなるではありませんか。一国の政治指導者がこういう姿勢を取っていて、どうして政治への信頼が回復するでしょうか。しかとお答えいただきたい。
裏金問題について、九月九日、日本ジャーナリスト会議は、今年度のJCJ大賞にしんぶん赤旗日曜版の裏金スクープを選ぶとともに、その授賞理由の中で、裏金問題を大政治犯罪だと断罪しました。
端的に聞きます。総理はそもそも裏金問題を大政治犯罪だと認識しているのか否か、お答えいただきたい。
しんぶん赤旗日曜版の十月六日号は、総理が代表を務めた石破派が、政治資金パーティーの収入を六年間で計百四十万円分不記載にしていた事実を新たにスクープしました。
総理は、昨年十二月十二日のテレビ番組で、石破派にもキックバックがあったことを認めた上で、出も入りもきちんと載せているとし、政治資金収支報告書の記載に問題はないと強調していましたが、あなたの発言は真っ赤なうそということになるではありませんか。
総理、石破派にも主要五派閥と同じ深刻な裏金疑惑が問われているのであります。総理は、新しい事実が判明したら調査する、勇気と真心を持って真実を語ると言われました。ならば、徹底的な再調査を行い、国民に真実を明らかにすべきではありませんか。
自民党の底知れない腐敗政治の大本には、企業・団体献金があります。パーティー券も含めて企業・団体献金は全面的に禁止し、政党助成金は撤廃すべきです。明確な答弁を求めます。
七月、厚生労働省が発表した国民生活基礎調査で、生活が苦しいと答えた方は五九・六%に上りました。働く人の実質賃金は、この十一年間で年三十三万円も減りました。他方、大企業の内部留保は、同時期に二百兆円以上も膨らみ、五百三十九兆円に達しています。大富豪四十人の資産は七・七兆円から二十九・五兆円へと膨れ上がりました。
これは決して自然現象ではありません。異次元の金融緩和で物価高騰を招き、国民を苦しめているのは誰か。働く人を派遣、パート、アルバイトなど非正規ワーカーに置き換え、使い捨て労働を蔓延させているのは誰か。大企業減税を行い、その穴埋めに消費税大増税を強行したのは誰か。
今日の国民の深刻な生活苦は、全てが自民党の経済失政の結果ではありませんか。総理にはその認識がありますか。あなたは岸田内閣の経済政策を引き継ぐと言いますが、こうした経済失政を引き継ぐおつもりですか。答弁を求めます。
大企業、大金持ち優遇から国民の暮らし最優先に、経済政策の大転換が必要です。三つの点に絞って具体的に提案いたします。
第一は、最低賃金を速やかに全国一律千五百円に引き上げることです。
最賃の大幅引上げのために不可欠なのが中小企業への社会保険料減免など直接支援ですが、総理は所信で一言も触れませんでした。直接支援は必要ないというお考えですか。日本共産党は、大企業の内部留保の増加分に時限的課税を行い、十兆円の税収を中小企業の賃上げ支援に充てる提案を行っていますが、この提案を受け入れる意思はありませんか。答弁を求めます。
第二は、賃上げと一体に、労働時間を短縮し、自由な時間を増やすことです。
日本の労働時間は、ヨーロッパの主要国に比べて年間で三百時間も長く、過労死がいまだに一大社会問題になっています。
こうした中、博報堂の行った若者調査では、今一番欲しいものとの問いに、一位はお金、二位は時間、三位は自由という結果が出ました。あるベビーシッター会社が、子育て中のお母さんを対象に、母の日のプレゼントに何が欲しいかのアンケートを行ったところ、断トツ一位は自分だけの時間でした。多くのお母さんが仕事と家事と育児に追われ、睡眠時間を削らざるを得ない現状にあるのであります。
総理は、自由に使える時間が欲しいという願いが国民の切実な願いであるという認識をお持ちですか。男性は仕事、女性は家事、こういう不平等を正し、ジェンダー平等の日本をつくるためにも、労働時間の短縮が必要だと考えますが、いかがですか。
こうした事態の抜本的打開のために、日本共産党は自由時間拡大推進法を提案しております。一日七時間、週三十五時間労働制に速やかに移行すること、この目標達成のために、政府に中小企業への支援、介護、教育、建設、運輸などの人手不足の分野で特別の対策を義務づけること、残業規制を強め、サービス残業を根絶することなどをパッケージで提案しております。
人間は、ただ働いて、食べて、寝るだけの存在ではありません。働く人が、人間らしい生活を営む収入とともに、余暇や趣味を楽しみ、豊かな教養に親しみ、家族と一緒の時間を大切にし、社会活動に取り組むための自由な時間を持つことができる社会こそ、本当に豊かな社会と言えるのではないでしょうか。総理に我が党の提案への見解を問うものです。
第三は、暮らしを支え、格差を正す、税金と財政の民主的改革です。
空前のもうけを上げている富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税を緊急に五%に減税する、インボイスは廃止する、これこそ物価高騰への最良の特効薬ではありませんか。
高齢者の負担を増やし、給付を減らすのは当たり前という冷酷な政治がまかり通り、高齢者の人権と尊厳が踏みにじられている現実は、本当に異常です。老人福祉法は、「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする。」と定めています。総理、この基本理念に立って、年金、介護、医療の充実を図ることこそ、政治の使命ではありませんか。
大学の学費値上げが一大社会問題になっています。今でも異常に高い学費を更に値上げなど、とんでもありません。高等教育への公的負担を大幅に増やし、学費値下げに踏み出し、学費ゼロの社会をつくるために、本気で政治の責任を果たすべきではありませんか。答弁を求めます。
日米軍事同盟絶対の政治を続けていいのかが問われています。
この間、集団的自衛権の行使容認、長射程ミサイルの配備、GDP比二%への大軍拡、武器輸出の解禁など、憲法九条の下でできないとされてきたことが次々と強行されています。それらの全てで、日米同盟の強化が最大の理由とされています。
日米同盟の四文字を聞くと思考停止に陥ってしまう政治が、今、日本の政界を覆っています。日米同盟のためにといって、日本国憲法を平気でじゅうりんする。日米同盟のためにといって、核兵器禁止条約に背を向け、果ては核共有、米国と核のボタンを押すことを共有するなどという被爆国の首相にあるまじき恥ずべき主張を行う。日米同盟のためにといって、沖縄県民の民意を踏みつけにして辺野古新基地建設を押しつけ、少女への性暴力を隠蔽する。独立国にあるまじきこんな政治を続けていいのかを、私は総理に問いたいのであります。
日本が軍事同盟強化で構えれば、相手も一層の軍事力強化で構え、軍事対軍事の悪循環をひどくします。その先に決して平和は訪れません。日本共産党は、世界を対立するブロックに引き裂く軍事同盟強化に断固反対を貫きます。
世界を見れば、軍事同盟に頼らずに平和をつくる動きがあるではありませんか。ASEANは、域内で年間千五百回もの会合を持つなど、徹底した対話の積み重ねで東南アジアを平和の共同体に変えました。さらに、平和の流れを域外に広げ、ASEAN十か国プラス日本、中国、米国を含む八か国で構成される東アジア・サミットを強化して、東アジアの全体をASEANのような戦争の心配のない地域にする大構想を提唱しています。あれこれの国を敵視するブロック政治を排し、地域の全ての国を包摂した平和の枠組みを発展させようというのがその根本精神であります。
今、日本政府がなすべきは、ASEANと協力して東アジアに平和を構築する、憲法九条を生かした平和外交ではないでしょうか。
総理の答弁を求めて、質問を終わります。
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕